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【H×H イルミ】黒と白のアリア

第17章 探究者達


エレオノーラは俯いたまま続けた。

「兄たちは戦へ出て、武勲を立てています」

「……」

「私は女だから戦えない。けれど音楽でなら国の役に立てると思って、幼い頃から必死で歌ってきました」

震える声が消えそうになる。

「でも、お父様はいつも兄たちの話をする時だけ嬉しそうで」

譜面に一滴、涙が落ちる。

「……どれだけ頑張っても、お父様は一度も私を見てくださいませんでした」

イルミは小さく息を吐いた。

「……そんなこと、俺に言ってどうする」

エレオノーラは答えられない。

「悔しいなら」

イルミは静かに言う。

「認めざるを得ない結果を出せばいい」

「でも、お父様はオペラになどお越しになりませんわ」

「来るさ」

「……え?」

そこで初めてイルミが顔を上げた。

「待つんじゃなくて、来させるんだ」

エレオノーラは震える声で言った

「そんな簡単じゃありません!」

「簡単なんて言ってないだろ」

イルミは一瞬だけ視線をエレオノーラに向ける。

「それでも、やるしかない」

言い切るとイルミは再びペンを取り、まるで何事もなかったかのように五線譜へ音を書き始める。

部屋にはまた、紙を擦る音だけが響き、エレオノーラは俯いたままその音を聞いていた。

こうしてペンを止めている間にもどんどん総譜は積まれていく。こうしてただ泣いている自分が無力に思えた。

(……悔しい)

エレオノーラは涙をハンカチでそっと抑える。
それからまたペンを握り、前の版に手を伸ばそうとした時――

「フレーズの呼吸を読むんだ」

急にイルミがポツリと言った。
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