第16章 喧騒の交差点
写譜師は恐る恐る総譜へ視線を落とした。
「ですが……それでも確認は必要です」
「だから前の版を見ろって言ってるだろ」
イルミはまるで駄々っ子さながらの一点張りだ。
「限度があります!!!」
写譜師は総譜を握りしめた。
「もし解釈を誤れば、間違った楽譜が何十部も出回ります」
部屋が静かになる。
イルミはしばらく写譜師を見ていたがやがて小さく息を吐く。
「……分かった」
写譜師が顔を上げる。
「清書が終わったものは全部見る」
「先生が?」
「ああ」
イルミは机の上の総譜へ視線を落とした。
「それでいいだろ」
写譜師はようやく肩の力を抜く。
「承知しました」
その返事を聞きながら、エレオノーラは冷めかけた朝食へ視線を向けた。
ウイングになんて報告すれば良いのだろう。朝から元気に喧嘩してたなんて。