• テキストサイズ

【H×H イルミ】黒と白のアリア

第15章 五線譜の牢獄



リハーサルが終わり、楽団員達が譜面を片付け始めた頃だった。

「ゾルディック先生」

声を掛けられ視線を向けると、眼鏡を掛けた男が立っていた。

「私、音楽院で教師をしておりますウイングと申します」

「……」

イルミは男を見た。

三十代半ばほどだろうか。
眼鏡の奥の目は穏やかで、人当たりの良さそうな笑みを浮かべている。
音楽院の教師と言われても優秀なのか無能なのかも分からない。
ただ何処にでも居そうな男だった。

「本日は一つお詫びがありまして」

「……何」

イルミは譜面へ視線を戻しながら続きを促した。

「クラリネットのシュタインが、本日欠席した件についてです」

「来なかった奴ね」

「はい」

ウイングは少し顎を引き頷いた。

「実は先月まで避難民の仮宿舎として使われていた地区があるのですが、昨夜そちらで井戸が崩れまして」

ウイングは頭を掻きながら申し訳なさそうに頭を下げる。

「彼は役場の土木課も兼任しております故、復旧作業の手伝いに駆り出されてしまったようです」

「……」

「本人は参加するつもりだったのですが」

「そう」

イルミは興味なさそうに視線を楽譜に落としている。反応の薄さにウイングは困ったように笑った。

「もう二、三日で片付くと思われます。ですから、次回の練習には参加できるはずです」

「なら別に構わない」

「申し訳ありません」

「もういいよ」

イルミは譜面を閉じた。

「理由なんて興味ない」

譜面を脇に抱えてイルミは続ける。

「問題は独奏者が欠席しただけで音楽が止まったこと」

ウイングは苦笑した。

「厳しいですね」

「普通だと思うけど」
/ 199ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp