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【H×H イルミ】黒と白のアリア

第15章 五線譜の牢獄


案内された建物は王宮にほど近い場所にある三階建ての石造りのアパートだった。

正面には小さな噴水があり、磨かれた真鍮の手摺が陽光を鈍く反射している。
貴族の屋敷ほどではないが、一人の作曲家が滞在するには十分すぎるほど豪華だった。


玄関を抜けると従者が頭を下げる。

「ゾルディック様。お待ちしておりました」

「……」

「食事は一日三回、王宮より届けられます。洗濯と清掃はこちらで承ります」

「わかった」

「浴室には既に湯を用意しております」

「そう」


従者は三階まで上がり、廊下の突き当たりにある角部屋の扉を開く。

「こちらがお部屋となります」



部屋の中央にはフォルテピアノ。
その側に置かれた譜面台。
壁際に写譜机と置き時計。
羽ペンにインク。五線紙。
そして窓際には書類棚。
必要な物が全て揃っていた。


イルミはゆっくり室内を見回した。
作業部屋の奥に寝室。
扉付近には浴室もある。
どこにも不満はない。

王宮まで徒歩数分。
食事の心配もない。雑務もなく買い物も必要ない。洗濯も掃除も必要ない。


「それではごゆっくりお過ごしくださいませ。暑い日が続いておりますので、どうかご自愛ください」

従者は丁寧に頭を下げ、静かに扉を閉めて去っていく。



イルミはゆっくり椅子へ腰を下ろす。
目の前には台本と白紙の五線譜。
宮廷楽団の練習予定表、そして置き時計。
指先で台本のページを捲る。

「――いい部屋だ、最悪にね」

呟きながらペンを取った。

作曲だけをさせるための部屋ということか。
だが、その口元は僅かに笑っていた。
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