第14章 災厄の到来
ライネルがゆっくり一歩近づく。
「ニナ」
低い声が落ちて、ニナは顔を上げる。
ライネルの手がそっと頬へ触れた。
「……っ」
戸惑う間もなく、額へ柔らかな口づけが落ちる。
ライネルはすぐには離れなかった。頬へ触れたまま、僅かに頭の角度を下げる。
ニナは思わず息を止めた。
逃げようとは思わない。けれど何をすればいいのかも分からない。
ライネルはそんな様子を見て、ほんの少しだけ笑う。
「そんなに緊張しなくてもいい」
低く穏やかな囁きの後、唇が重なった。
冷えた唇が溶けていく感触に、心臓が少し速くなる。
一瞬触れるだけの口付けだったが、それでもニナの胸は落ち着かず、視線を泳がせる。
ライネルはその反応を見て、困ったように笑う。
「今日はここまでにしておこう」
「……っ」
ニナは何も言えなかったが、頬が赤くなるのが自分でもわかった。
ライネルは今度は額へ、もう一度軽く口づける。
「ゆっくり慣れればいいさ」
港から吹く風が強くなる。
ニナは胸元を押さえた。
心臓はまだ少し速い。
けれど、もう怖くなかった。