第14章 災厄の到来
封筒と便箋を手に書斎の扉を開く。
執事に渡して王宮へ送らせるつもりで廊下へ出た。
すると、居間から賑やかな声が聞こえた。
「本当に素敵ね」
ニナの掌の上で、窓辺からの光を受けた青い石が静かに輝いていた。
「この石を見ていると不思議と落ち着くんです」
「まあ!」
キキョウが嬉しそうに声を上げる。
「ライネル様は貴女のことをちゃんと見てくださったのね」
「そうなのでしょうか」
「そうよ。だって貴女にぴったりじゃない」
キキョウは石を覗き込みながら微笑んだ。
「今は静かな光だけど、磨けばきっとどんな宝石より美しくなるわ」
「そんな!」
「良かったわねぇ」
言いながらキキョウは居間に顔を出したイルミに気付き、ぱっと顔を明るくした。
「あら、イルミ!」
「母さん。手紙を出したいんだけど執事はどこ?」
「そうね。確か庭の方へ行ったけれど、きっとすぐに戻るわよ」
「そう」
そのまま、庭に歩いて行こうとするイルミをキキョウが呼び止める。
「ねえ、イルミ。少し休憩なさいな」
イルミは半身だけで振り返る。
「見てごらんなさい。この石」
キキョウは楽しそうに続ける。
「婚約指輪の代わりなんですって」
イルミの視線がニナの掌の上の石へ落ちる。
「素敵でしょう?」
「別に」
「もう」
キキョウが細い肩を竦める。
「貴方も将来、こういう贈り物ができる殿方にならなくては」
「興味ない」
「そういうところよ。まったくお兄ちゃんったら、嫌ね」
執事はキキョウの言う通りすぐに戻ってきた。
すぐにイルミの分のティーカップと菓子が盆に載せられテーブルに運ばれる。
イルミは視線をテーブルに戻しかけ、一瞬だけニナと目が合う。
だが、すぐに視線は通り過ぎてティーカップに止まる。
「……忙しいから」
それだけ言うとイルミは執事に向け視線をやる。
「それ書斎に運んで。後、これ急ぎで王宮宛に出しといて」
「畏まりました。お預かり致します」
執事が封筒を受け取ると、イルミはまた書斎に戻って行った。