第14章 災厄の到来
だが、そんなことはどうでもいい。
確認すべき問題は別にある。
イルミは同封されていた予定表を引き寄せ開幕日を確認した。
「……」
もう一度確認する。
また分厚い台本を見ては予定表を見る。
「……は?」
思わず声が出た。
キキョウが首を傾げる。
「どうしたの?」
イルミは答えず、代わりに予定表を握りしめた。
紙がぐしゃりと音を立てる。
「イルミ?」
「書斎に行く」
そう言い落とすとイルミはそのまま足早に部屋を出ていった。
残されたニナとキキョウは顔を見合わせる。
「どうしたんでしょう。イルミさん」
「夕食は書斎に運ぶことになるわ」
「え?」
キキョウはどこか楽しそうに微笑んだ。
「あの子、当分出て来ないもの」
「……そんなに大変なんですか?」
キキョウは紅茶を口元に運ぶ。
「良い作品が出来そうね」
書斎のデスクで、イルミはページを捲りながらざっと見積もる。
なんなんだこの超大作は。
三時間規模のオペラになるだろう。
その劇中で必要な曲は、
独唱。重唱。合唱。
短いレチタティーヴォ。
オーケストラ間奏。
「多いな」
数十曲はある。
9月10日
第一王子レオポルト=ルドルフ=グランツェ
元帥叙任式
勝利祝賀公演開幕
予定表にはこう示されていた。
完全に王家の都合のみで決められた日程らしい。
台本を捲る手を止めイルミはぼやく。
「何なのこれ、締め切りが狂ってる」
リハーサルも入れれば、実質曲を書く時間は1ヶ月半あるかないかというところだ。
イルミは椅子の背に身を預けた。
指先で黒髪をひと房掬い、くるり、またくるりと弄ぶ。
「……地獄だな」