第14章 災厄の到来
先日、イルミ宛に王宮から一通の手紙が届いていた。
『拝啓
若葉の緑もいよいよ色濃く、庭先を渡る風にも夏の気配を感じる頃となりました。
貴殿におかれましては、変わらずご壮健にてお過ごしのことと、心よりお慶び申し上げます。
先般は遠路はるばる当王国までお越しいただき、また祝賀公演の準備に際しましては格別のお力添えを賜りましたこと、王宮一同深く感謝いたしております。
殊に音楽に関する貴殿の御見識につきましては、陛下、殿下並びに多くの者が感服いたしており、その折に賜りました数々のご助言は、今なお宮中にて語り草となっております。
さて、かねてより選定を進めておりました祝祭劇の台本につきまして、このたびようやく定本が整いましたことをご報告申し上げます。
つきましては、後日あらためて写本を馬車にてお届けいたしたく存じますので、ご査収賜れれば幸甚に存じます。
まずは書中をもちましてご報告かたがたご機嫌伺い申し上げます。
末筆ながら、貴殿のますますのご壮健とご活躍を神に祈り奉ります。
敬具』
三分の二ほどは季節の挨拶と礼辞だったが、要するに台本が完成したから送るという話である。
窓際の壁に背を預けたまま、イルミの視線だけが時折門の方へ向く。
「あらイルミ」
キキョウがそんなイルミの様子に気づく。
「さっきから何度も外を見ているわね。何かあったの?」
「別に」
イルミは視線を外に向けたままそれだけ言う。
ニナはその横顔をちらりと伺った。