第13章 Interlude(間奏)※一部、微裏あり
ぽろん。
小さく弦を叩く音が夜へ滲んだ。
誰でも知ってる有名な『星巡りの歌』だ。
けれど途中から旋律が少しずつ変わっていく。変奏曲の形を成したその音が気まぐれに跳ねるたびに、ニナの静まった心に小さなダイアモンドの粒のような光がパラパラと落ちてくる。
ニナはソファへ腰掛け、刺繍枠を手に取る。
針を動かしながら、小さく旋律へ声を重ねた。
透明な歌声だった。
夜空へ滲む星の光みたいに淡く、細い響き。
「ニナ姉の声さ」
キルアは鍵盤を叩く手を止めずに言う。
「?」
「お星さまの瞬きみたい」
ニナは少し目を丸くする。
「そうかな」
「うん……なんか……」
言いかけたキルアが、ふぁ、と大きな欠伸をした。
「……俺の方が眠くなってきた」
「だから言ったでしょ」
ニナは苦笑する。
「キル、もう寝なさい」
「んー……」
不満そうな返事とは裏腹に、キルアの瞼はもう半分閉じかけていた。
「おやすみ……なさい」
ぱたぱたと足音が遠ざかり、居間には再び静けさだけが残る。
ニナは膝掛けの上で、刺繍針を動かし続ける。
窓の外には深い群青の空。
低いテーブルの隅では、青い石が静かに光っていた。