第13章 Interlude(間奏)※一部、微裏あり
ゾルディック邸宅。
夜はとうに更けていた。
屋敷へ戻ってからも、ニナはなかなか寝付けずにいた。
窓辺へ腰掛けたまま、指先で小さな青い石をそっと転がす。
深い海の底を閉じ込めたような青が灯りを受けるたび、硝子細工のように静かに光を返す。
「……綺麗」
小さく零した声は、夜の静けさへすぐ溶けた。
ライネルの穏やかな声がふと蘇る。
――海は好き?
あの人は、不思議な人だった。
話しているだけなのに、ニナの小さな世界が広がっていく気がした。
けれど同時に、胸の奥が妙に落ち着かない。
肩を抱かれた時、少し驚いてしまったのは、あまりに優しかったから。
あんな風に抱き寄せられた記憶は、ニナには残っていない。
けれど不思議と懐かしかった。
赤子が愛情へ包まれるみたいな、遠い安心感だった。
物心もつかない頃には、誰かにああして抱かれていたのだろうか。
ニナは青い石を胸元で握る。
青い石を見つめていると、少しずつ呼吸が静かになっていく。
けれど落ち着けば落ち着くほど、胸の奥では別のざわめきが揺れ始めた。
まるで風に煽られた木々の葉が、夜の中でざわざわと擦れ合うみたいに。
静かな部屋で一人でいることが、今夜は少しだけ怖い。
ニナはそっと部屋を出る。
廊下の先から、ぽろん、と小さな音が聞こえてきた。
居間では、小ぶりのピアノの前にキルアが座っていた。
「あ、ニナ姉」
白い指で鍵盤を適当に叩きながら、キルアが振り返る。
「どうしたの?」
「……少し寝れなくて」
「ふーん」
キルアは椅子の上でくるりと向きを変えた。
「ニナ姉、早く寝ないとまた倒れるぞ」
「キルこそ」
「俺は平気」
そう言いながらも、キルアは小さく欠伸を噛み殺す。
ニナは思わず少し笑った。
「じゃあさ」
キルアは再び鍵盤へ向き直る。
「子守唄、弾いてやる」