第13章 Interlude(間奏)※一部、微裏あり
王城の執務室。
重厚な机の向こうで、書類へ目を落としていたルドルフ王がゆっくり顔を上げる。
鋭い視線が、そのままイルミを射抜いた。
「さて、待遇の件だが」
低い声が室内へ響く。
「何か不満でもあるのかね」
「不満ですね」
間を置かない返答に、側近達の空気が僅かに張りつめる。
イルミは一切臆する様子もなく答える。
「現状では効率が悪い」
「ほう?」
「失礼ながら、今の楽団はオペラ以前にただの騒音です。宮廷楽団員へ支給している食費と衛生費を引き上げて頂きたい」
「ふぅむ」
「空腹と不衛生は集中力を鈍らせる。兵士にだけ金を使っても意味がない」
淡々と話すその口調に感情はなく、当然の理屈を述べているだけのように。
イルミはソファへ浅く腰掛けたまま、指先で軽く顎を支える。
「民衆は、戦争そのものに熱狂するわけじゃない」
ルドルフは僅かに目を細めた。
「続けたまえ」
イルミは視線だけを僅かに上げる。
「勝利の空気です」
イルミはそこで初めて僅かに身を乗り出した。
白い指先がゆるく宙をなぞる。
「音楽は感情を増幅する。歓声、恐怖、陶酔、高揚……それらを戦争の勝利と結びつければ、民衆は自ら熱狂し始める」
静かな口調だった。
だが、その内容には妙な説得力があった。
「オペラはそのための装置になり得ます」
数秒、室内が静まり返る。