第13章 Interlude(間奏)※一部、微裏あり
何はともあれ、イルミは今回予定されていたエレオノーラへのレッスンの務めを完了した。
王宮の長い回廊を歩きながら、イルミは気怠そうに目を細める。
夜の回廊は静まり返っていた。
等間隔に並ぶ壁灯だけが、淡い琥珀色の光を落としている。磨き上げられた大理石にその光がぼんやり滲む。
昼間は貴族達の声や靴音で満ちていた場所も、今は広すぎるだけの空間だ。
遠くで足音が響き、すぐに消える。
広い回廊は、音までも飲み込んでしまうようだった。
イルミは歩みを進めながら、サッと横髪をかき上げる。
今日はもう遅い。
今からパドキア共和国の自宅へ戻るのは現実的ではない。
(……馬車だけ手配して、宿へ戻るか)
近くにいる従者を探して辺りへ視線を巡らせる。
すると、遠ざかったはずの気配が再びこちらへ近づいてきた。見れば向こうから一人の従者が足早に近づいてくる。
「ゾルディック様。こちらにいらっしゃいましたか」
従者は広い回廊を駆け回ってでもいたのだろうか、息を切らしている。
「何?」
「何かご入り用でしたらお申し付けをと、侍従長より」
随分気の利くことをする。
イルミは軽く眉を上げたあと、淡々と口を開いた。
「明日の朝、パドキアまで向かう馬車を一台用意して。できれば揺れの少ないもの」
「承知致しました。手配しておきます」
従者は一礼する。
それからどこか言いにくそうに視線を伏せた。
「……それと」
「?」
「陛下がお呼びです」
去ろうとしたイルミの足が僅かに止まる。
「今?」
「はい。執務室へお越しいただきたいとのことです」
――面倒だな。
そう思いながらも、イルミは特に表情を変えなかった。
「そう」
イルミは短く息を漏らすと、ゆっくり踵を返した。
「案内して」