• テキストサイズ

【H×H イルミ】黒と白のアリア

第12章 Cadenza(カデンツァ)※一部、微裏・怪我表現あり


空気が変わりかけた、その瞬間だった。

――コンコン。

乾いたノック音が鳴る。


「殿下。失礼いたします」

年輩らしき侍女の声に、イルミは反射的に身体を離した。

扉が開き入ってきた侍医と側近が、室内の空気を見て一瞬だけ目を止める。

だが、すぐに頭を下げた。

「ゾルディック先生。この度は殿下の命を救っていただき、誠にありがとうございました」

事務的な声だった。

「これより傷の具合を確認いたしますので、先生はお部屋の外へ」

その声音は丁寧だが、有無を言わせない。


当然だった。

未婚の王女の私室。しかも夜。



「…………」

イルミは数秒だけ無言になる。

それから何事もなかったように、すっと立ち上がった。

「ええ。オペラも控えておりますし、大事に至らず良かった」

イルミは扉へ歩み寄ると、取っ手へ手を掛ける。

「それでは」

扉が静かに閉まる。

 



廊下へ出たイルミは、数歩歩いたところで足を止めた。

瞼を閉じて短く息を吐く。

「……はぁっ、……勘弁してよね」

呆れたように零しながらも、その呼吸には抑え込んだ熱がまだ残っていた。
/ 199ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp