第12章 Cadenza(カデンツァ)※一部、微裏・怪我表現あり
「ふぅん」
他人事みたいな返事をしながら、ソファに歩み寄ったイルミはエレオノーラの隣に腰を下ろした。
エレオノーラは俯いたまま、小さく息を吐く。
「私、余程恨まれてるのね」
「仕方ないでしょ。権力で庶民の生活をぶち壊して、またゼロから作らせるんだから」
「それはそうですけど……」
「王族なら、いつこういう事が起きてもおかしくない。慣れるしか無いね」
「……こんな時にまで。お説教なんて聞きたくありません」
レオノーラは不満そうに唇を尖らせる。
「少しくらいは、気遣ってくださっても良くない?」
「なにそれ。慰めて欲しいの?」
「別に。そんなこと言ってませんわ」
エレオノーラは拗ねたように視線を逸らした。
けれど否定しながらも、その身体はほんの僅かにイルミの方へ寄っている。
イルミはソファの背に片腕を回す。
「まさか俺に看病までさせる気?」
ソファの背へ片腕を預けたまま、イルミは小さく肩を竦める。
「ここから先は有料」
「本当に貴方って冷たいのね」
そう言った直後、不意にエレオノーラはイルミの手首を掴んだ。
白く細い指だった。
「……」
そのままエレオノーラは掴んだイルミの手を、自分の膝の上へそっと引き寄せた。
薄い寝衣越しにも、熱を持った皮膚の温度が伝わってくる。
「……手当ての時は、あんなに容赦なかったのに」
掠れた声にイルミの指先が僅かに動く。
エレオノーラは微かに睫毛を伏せる。
「私、あんな乱暴な扱い初めてですわ」
「……大袈裟」
「本当ですもの」
その声には、文句よりも別の熱が滲んでいた。
寝衣の肩口から覗く肌は、火影を受けて白く浮いていた。
昼間の衝撃で乱れたままの金髪が頬へかかり、熱を持った肌だけが淡く赤い。
普段は誰より気高く振る舞う王女なのに、今は痛みのせいか、その睫毛は少し重たそうだ。
弱っているだけ。
ただそれだけの筈なのに、その姿は妙に目障りだった。
イルミは視線を逸らす。
「……ほんと、面倒」
呆れたみたいに言いながらも、イルミはその場から離れられなかった。