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【H×H イルミ】黒と白のアリア

第11章 Second Theme(第二主題)


会食の後、ライネルは館の中を案内してくれた。

「これは北方の島の護符だ。嵐除けらしい」

ライネルは掌に収まるほどの青い石をニナへ差し出した。

深い海を閉じ込めたような色だった。
磨かれていない原石なのに、窓から差す淡い光を受けるたび、内部で静かに青が揺れる。

ニナは思わず目を丸くした。

「……綺麗。海みたい」

ライネルは静かに頷いた。

「“レネイス”って石だ。北の海でしか採れない」

「レネイス……」

ニナはそっと両手で受け取る。
ひんやりとしていた。だが、不思議と冷たい感じはしない。

「削ると、少し塩の匂いがする」

「え……?」

ニナが驚いて顔を上げる。

「本当に?」

「ああ」

低く笑ったライネルは、異国の品が並ぶ飾り棚へ片肘を添えながら続けた。

「昔は航海へ出る人間が、お守り代わりに持ってたらしい。海へ還る石だとか、そんな話もある」

ニナは恐る恐る石へ顔を寄せる。
微かに、潮風にも似た香りがした気がした。

「……すごい」

その声は、吐息に溶けるように零れた。

ライネルはそんな彼女を見つめたまま、ふっと目を細める。

「君は本当に珍しいものが好きなんだな」

「だって……こんなの初めて見ました」

「なら、持ってるといい」

「え……?」

ニナが戸惑って視線を上げる。

「加工すれば指輪にもできる。まあ、今はまだ石ころだけど」

何でもないことみたいに言った、その言葉だけが胸の奥へ沈んでいく。

ライネルはそのままニナの手を取る。
日に焼けた掌が、指先までしっかり包み込む。
逃がさないように。
だが痛くない強さで。

ライネルの親指がニナの左手を優しくなぞる。

「……綺麗な手だ」

ニナは息を呑む。
だが、その言葉へどう返していいのか分からなかった。

ライネルはその無垢さに困ったように笑った。
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