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【H×H イルミ】黒と白のアリア

第11章 Second Theme(第二主題)


ライネルは立ち上がると、自然な動作でニナの側へ歩み寄った。

「食事の用意が整っている。移動しようか」

「あ……はい」

ニナも慌てて立ち上がる。



廊下へ出ると、迎賓館の窓硝子を叩く雨音が長く響いていた。

使用人達が静かに頭を下げる中、ライネルはニナの歩幅に合わせてゆっくり歩く。
早すぎず、遅すぎず、相手が歩きやすい速度を知っているかのようだった。



通された会食室は、控室よりもずっと広かった。長卓ではなく、窓際に円卓が用意されている。

壁際には燭台の灯りが控えめに揺れ、窓硝子には絶え間なく雨粒が流れていた。

背へ軽く手を添え、ライネルは椅子を引いた。
ニナはその前で小さく動きを止める。
ライネルはそんな彼女を見下ろし、不思議そうに首を傾げる。

「……どうした?」

「え……その……」

ニナは戸惑ったように視線を揺らす。
ライネルはそんなニナを見て、ふっと低く笑う。

「そうか。こういうの慣れてないのか」

「……すみません」

「謝ることじゃない」

ライネルは自然な動作でニナの右手を取った。白い手袋越しの指先は整っていて、無駄な力が入っていない。

「ほら」

軽く引かれるまま一歩踏み出す。

その瞬間、ライネルのもう片方の手がそっとニナの腰へ添えられた。

「……っ」

ニナの肩が微かに揺れる。

だが押し付けるような強さではなく、転ばせないために支える程度の、絶妙な力加減だった。
ライネルはニナの反応を横目で見ながら、そっと椅子へ導く。

「力を抜いて」

低い声が耳の近くで落ちる。

ニナは緊張したまま、促されるようにゆっくり腰を下ろした。

椅子が静かに引き寄せられ、ライネルの腕が背後を掠めた。
一瞬、潮風のような匂いが近づく。

「……うん。ちゃんと座れた」

安心させるような声に、ニナは小さく頭を下げた。
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