第11章 Second Theme(第二主題)
ニナは反射的に立ち上がった。
室内へ入ってきた男を見て、ニナは一瞬だけ目を瞬かせた。
もっと青白い貴族然とした人物を想像していた。だがライネル=ヴェルハイトは違った。
日に焼けた肌。広い肩。海風に晒されたような灰褐色の髪を無造作に後ろへ流している。
装い自体は上質だったが、細身の宮廷貴族のような繊細さはない。
むしろ船の甲板へそのまま立てそうな、地に足のついた体格をしていた。
そのくせ動きには不思議と粗野さがない。海風の似合う体格をしているのに、部屋へ入った瞬間から空気の扱い方が妙に静かだった。
三十二歳と聞いていた。若いというには落ち着きすぎていて、けれど年配という程の重さもない。
ニナは慌てて一礼した。
「は、はじめまして。本日はお時間をいただき――」
「そんなに緊張しなくていい」
ライネルは穏やかに言った。声を荒げるでもなく、笑いかけるでもない。ただ張り詰めた空気が少しだけ緩まる口調だ。
「こちらこそ急な話になってしまって申し訳ない。座ってくれるかな」
「あ……はい」
促され、ニナは再びソファへ腰掛ける。
ライネルも向かいへ座った。