第26章 そして、スランチオに始まる【予兆/人外魔境新宿決戦】
「『頑張れ』?」
「『死ぬな』?」
秤とパンダ(第二結界での戦闘の影響で小さくなった)が、怪訝な表情で唸るのを、「そうだよなぁ」と虎杖も眺めていた。
「なんかしっくりきませんね」
「今まで勝って当たり前の人間だったからな」
順平の苦笑いに、ミニサイズのパンダが「うんうん」と頷く。
「ユージが受肉してすぐのとき、五条先生は宿儺と戦ってる」
「あんときは指一本分だろ。虎杖の身体のこともあったから加減してたはずだが、それがなかったら一瞬で消し飛ばしてるぞ」
詞織と伏黒の話に、「マジかー」と思わず声が出た。
「どっちにしたって、『心配しよう』、『応援しよう』という気が湧かないよね」
ため息を吐く綺羅羅に、狗巻が「こんぶ」と相槌を打つ。
「ははっ。でも、普通に喜んでくれると思うよ」
「『あたりめぇだろ』とか返されたら、宿儺の前に殴っちまいそうだ」
笑う乙骨の隣で、真希が盛大に顔を顰めた。
やがて、カツッと鳴る足音に全員が振り返る。五条を先頭に、歌姫と楽巌寺が階段を降りてきていた。
いつもとは違う、感情の欠片すら感じられない五条の表情。
纏う空気すらビリビリと震え、さっきまでどう激励しようかと悩んでいた全員が言葉を呑み込んだ。
そんな中で、虎杖は「先生!」と手を上げて呼びかけた。
「術式邪魔!」
五条の空色の瞳が瞬くと、彼は「ははっ」と声を上げ、いつもの調子で笑う。そして着物の羽織を脱ぎ、背中を示した。
「ばっちこい!」
五条の言葉に、虎杖は真っ先に駆け寄り、ベシッと背中を叩く。
それを皮切りに伏黒や詞織、順平、乙骨、狗巻、真希、パンダ、秤、綺羅羅――どう送り出そうかと考えていた全員が、代わる代わる背中を叩いて激励を送る。
「行ってこい、バカ目隠し!」
「面(ツラ)だけの男じゃねぇって証明しろ!」
「しゃけ!」
「任せますよ、五条先生」
「信じてるから」
「お願いします!」
「しんどくなったら代わりますよ」
「勝てよ、五条さん!」
激励に参加しなくても、家入や脹相たちも、託す想いは同じ。
その想いを一心に背負い、五条は一言――……。
「――応‼︎」
* * *