第26章 そして、スランチオに始まる【予兆/人外魔境新宿決戦】
詞織を刺した感触が蘇った。
記憶の中にある、見開かれた夜色の瞳から目を逸らすように瞼を閉じる。
――「我が一門の当主 神ノ原 星也 並びに、妹 詩音の――返還を求めます」
そう宣言して宿儺に立ち向かった星良は、胸を貫かれた。
宿儺に刀の姿へ変えられて……この、あたしが……。
ヒトガタを使っていたようだが、魂を分けられたヒトガタが致命傷を負えば、それは本体の魂にも還る。
――『今頃、本体に衝撃が跳ね返って死んでいるだろう』
違う。宿儺のやったことよ。
あたしは“やらされた”だけ。
そう言い逃れたくても、この目が見た。
肉を貫く感触が、手に、身体に、残ってる。
違う……!
あの、現代最強が宿儺を倒せば終わる!
相手は呪いの王――それでも、戦うのは現代最強・五条 悟よ!
負けるはずない。“絶対” 勝てる!
だから……だから……!
『詩音』
名前を呼ばれ、宿儺に顎を掴まれた詩音は、無理やり視線を合わせられる。
『下を見るな。俺を見ていろ。この俺が現代最強とやらを殺す、その瞬間をな。紅い眼(まなこ)を開き、しっかり焼きつけろ』
違、う……違うわ。
死ぬのはオマエ。
現代最強が、お前を殺してくれる。
そうでしょ……そうじゃなきゃ……。
――『仮にそうだとして、どこへ戻るつもりだ? 姉を手にかけ、妹を殺しかけておいて……誰がオマエを受け入れる?』
――『もはや、オマエに戻れる場所など存在しない』
そんなことないわ。
帰れるわよ、詞織のところに……。
自分の顎を掴む宿儺の手を振り払うつもりで袖を掴む。それでも、何も言い返すことはできなかった……。
* * *