第26章 そして、スランチオに始まる【予兆/人外魔境新宿決戦】
「別に責めているわけではない。これまで彼のその『優しさ』で救われた者も大勢いるだろう。だが、そうやって彼のやり方を『優しさ』として許容してきた結果、彼はまた一人で決め、抱え込み、実行した」
そこで言葉を区切り、「とりあえず」と日車は伏黒と詞織をそれぞれ見た。
「彼が無事に戻れたなら、君たちが一発ずつ殴るくらいは目を瞑ろう。本来なら刑法第208条の暴行罪、怪我を負わせれば刑法第204条の傷害罪だが、それくらいは許されるだろう」
言い終えた日車が椅子を引いて立ち上がる。
「どこ行くの?」
「虎杖は時間がかかるようだからな。方々先に挨拶を済ませておく。案内してくれ」
詞織の問いに答え、日車はスタスタと先を歩いて行った。
「ま、待って」
詞織が慌てて日車の後を追い、伏黒も立ち上がる。
「殴る、か……」
考えたこともなかったな。
自分の手のひらを見つめ、ギュッと拳を握る。
ずっと胸の中で燻っていた、モヤモヤとした気分の悪い何かが、少しだけ晴れたような気がした。
* * *