第27章 開幕のコン・フォルツァ【人外魔境新宿決戦】
「お前ら、何 コントみてぇなことやってんだ。俺は『水を渡してやれ』って言ったんだ。ボトルのことは言ってねぇ」
「えぇ⁉︎ 無理ですよ、容器もなしに中の水だけ渡すなんて!」
顔を青ざめさせる順平だったが、ボトルに入った水をしばらく見つめた三輪は、突然 兄弟子である日下部にペットボトルの水をふっかけた。
『水だけ渡せばいいんでしょ』と矛先を順平から日下部に変えた三輪に、水をかけられた本人は胸倉を掴んで青筋を立てる。
順平は「えっと……」と誰かに助けを求めようとしたが、応えてくれそうな者を見つけられず、黙って席に戻ることにした。
「結界を閉じずに領域を展開するっていうのは、そういうことなんだよ」
我関せず、と冥冥は一言で一連のやり取りをまとめ、モニターに視線を戻す。
「器もなしに水を溜めることはできるか? キャンバスを使わずに空に絵を描けるか? 根も葉も茎もなく、種から花が咲くか?」
「ボクはできるけどね。器もなしに水を溜めるくらい」
東堂の説明に、垂水が術式で水を出してみせた。
「それはまた話が別でしょ。いちいち話の腰を折らないでくれる?」
得意げに水を出して実演する垂水に、真依が呆れ顔で釘を刺す。
「つまり! ハードなしでソフトを再生するような……とにかくありえねぇっちゅう話だよ!」
三輪にかけられた水で濡れた髪をガシガシと払いながら、日下部は語気を強くしてまとめた。
「タコの結界に入ってきた恵の不完全な領域は、結界を閉じてなかったぞ。詞織のもそうだったな」
真希の言葉に、七海が「確かにそうでしたね」と頷く。