第26章 そして、スランチオに始まる【予兆/人外魔境新宿決戦】
「気づいていないのか? まさか、彼の行いが『優しさ』だとでも?」
そこまで言って、日車は伏黒に指先を向けた。
「星也君は君の姉が受肉されていることを知っていた。それを君たち二人に意図的に伏せていた。そうだな」
「そう、だけど……でも、それはわたしたちを傷つけないようにって兄さまが……」
「それだよ」
詞織の言葉を遮り、日車が指摘する。
「『君たちを傷つけないため』。随分と聞こえのいい言葉だな。だが、実際は君たちから選択権を奪う行為だった」
そうだろ、と日車は続けた。
「君たちはまだ子どもだが、同時に術師だ。姉が受肉されていたことに対して、それをどう受け止めて行動するか。君たちには選択する権利があったはずだ」
「確かに、そうだが……」
だから、星良は先ほど謝罪し、全てを打ち明けてくれた。
津美紀の件も星也のことも、全て自分たちの責任だと、そう伝えてくれた。
「身代わりの術、だったか。これもそうだな。星也君のこの術によって伏黒、君は救われた。だが、結局 彼はその身代わりの術についても黙っていたわけだ。言えば君が断ることは目に見えている。彼としては合理的な判断だったんだろうが……庇われたことによって、君には心理的負担が生まれた」
――「俺たちはそんなに頼りないのかよ」
そう突き放したときの星也の表情は、あれから一度も忘れたことはない。
俯く伏黒たちに、日車は一つ嘆息する。