第26章 そして、スランチオに始まる【予兆/人外魔境新宿決戦】
五条から星良の病室を追い出され、伏黒と詞織は修練場へ向かった。
だが、そこにいた冥冥に遣いを頼まれ、拠点の入口にあるベンチに腰をかけて待つ。
「出迎えって……せめて人相や背格好くらい教えてくれよ」
「見れば分かるって」
「だとしても」
ぼやく伏黒の隣で、詞織は俯いていた。
詩音がいなくなってからずっと、詞織は下を向くようになった。笑顔も見ない。この状況で笑えという方が難しいかもしれないが……。
手を伸ばし、詞織の顔にかかる髪を払った。
「メグ……?」
夜色の瞳が頼りなく揺れる。詞織に答えることなく目元に触れ、頬を撫でた。
「下ばっか向いてると、必要なモンが見えなくなるぞ」
「あ……ごめ……」
「謝んな」
詞織の謝罪の言葉を遮り、額を軽く小突く。
しばらく他愛ない会話をし、時折り話が途切れて沈黙が続くこともあった。けれど、その沈黙すら心地よく、張り詰めていた緊張の糸がわずかに緩んだ。
やがて、拠点の自動ドアが開き、コツッと革靴を鳴らす音が響く。
そちらに目を向けると、一羽の烏を連れた、身なりのいい男がぐるりとエントランスを見渡し、伏黒たちへ焦点を当てる。