第26章 そして、スランチオに始まる【予兆/人外魔境新宿決戦】
「派手にやってるねぇ」
ポケットに手を入れ、垂水が虎杖と日下部の組み手を眺めていた。
「状況的にはあれくらい必要だけど、君がついてこられないもんね、吉野クン」
振り返った垂水が視線を下げ、膝を折って荒く呼吸を繰り返す順平を見下ろす。
「垂水先輩」
パタパタと足音を立ててやってきた真依が、垂水にペットボトルを投げた。
「ありがと、マイマイ。気が利くじゃん」
「一言 余計なのよ。あと、マイマイって呼び方はいつになったらやめてくれるのかしら?」
「酷いなぁ。運命共同体でしょ」
最悪、と顔を顰めた真依が、同じように順平にもペットボトルに加え、タオルを渡す。
「使えば?」
「ありがとう……ございます……」
真依からタオルとペットボトルを受け取り、順平はゆっくりと呼吸を整えていった。
「全く、なんでそんなに頑張るのかしら」
順平の様子に嘆息し、真依は修練場の端のベンチに腰を下ろす。
垂水がパキッとペットボトルを開けて口をつけ、順平もタオルで汗を拭い、ペットボトルの水を飲んだ。
「あのっ……もう少し厳しくてもいいです……! もう一本 お願いします……!」
グイッと口元を拭い、臨むように順平が垂水を見上げた。それを見て目を丸くした垂水が、肩を竦める。
「あのねぇ……レベル30のヤツが、ラスボス間近の森でレベル上げして身につくと思う?」
呆れたような顔をする垂水に、順平は「うっ」と言葉を詰まらせる。
「毒の使い方は?」
「療養中に家入さんから……」
順平の答えに、垂水は「そ」と短く相槌を打った。
「なら、あとは基礎体力と体術かな。どんだけ術式のポテンシャルがあっても、術式や呪具頼りじゃすぐに詰む」
「たまには まともなことを言うわね」
「一言 余計だよ、マイマイ」
先ほどの真依の言葉を反復するように眉を寄せた垂水は、一つ息を吐き出す。
「はい、休憩終わり。とりあえず、戦場で死なない程度には鍛えてあげるよ」
「よろしくお願いします!」
強く意気込んだ順平は、低く腰を落として構えた。
* * *