第24章 グラーヴェに堕ちゆく【浴】
「七海、星良ちゃんの呼吸が……!」
灰原の言葉にグッと息を詰める。
「猪野君、すぐに家入さんを呼んでください! 灰原は星良に人工呼吸と心臓マッサージを!」
呆然としていた猪野が、「は、はい!」と返事をして部屋を飛び出した。灰原もすぐに救命措置を始める。
――左腕さえ動けば、自分が……。
懸命に人工呼吸と心臓マッサージをする灰原を見ながら、己の無力さに右手を握りしめた。
そこへ、猪野が家入と部屋へ戻って来る。
「七海、状況は?」
「呼吸停止しています。灰原が救命措置をして……」
そのとき、「カハッ」と星良の呼吸が戻った。
「星良」
灰原が家入と場所を変わる。
彼女は手早く首筋に手を当てて脈を確認し、星良が着ている儀式用の衣の衿に手を入れた。そこで、家入が目を瞬かせ、手を止めた。何か違和感があったらしい。
衿を広げようとして、不意に家入が確認するようにこちらを見てきた。
「構いません」
灰原や猪野の視線を気遣ってのことだろうが、今は気にしている時間も惜しい。
家入が着物の衿を広げる。そこで、七海たち全員が目を見開いた。
星良の身体には文字を刻んだ包帯が何重にも巻かれ、その下にも、肌に直接 いくつも文字が書かれている。
「これは……」
家入が慎重に包帯の結び目を外し、包帯に書かれた文字を確認した。