• テキストサイズ

夢幻泡影②【呪術廻戦/伏黒 恵オチ】

第24章 グラーヴェに堕ちゆく【浴】


「七海サン、ずっとついてる気っスか?」

「えぇ。今の私には、それくらいしかできないので」

 コーヒー缶を買ってきてくれた猪野に礼を言うも、左腕に力が入らず、プルタブを起こせないことに気づいた。

「あ、すみません……」

 猪野が七海からコーヒー缶を受け取ろうとする。だが それより早く、部屋に入って来た灰原が七海の手からコーヒー缶を取り上げ、プルタブを起こして差し出してくれた。

「はい、七海」

「ありがとうございます」

 こんな簡単なこともできないのか。自分が嫌になってくる。

「そんな顔するなよ、七海。リハビリすれば、少しは動かせるようになるって家入さんも言ってただろ?」

「ですが……術師としては致命的です。前線に立つのは無理でしょう」

 こうして、彼女は命懸けで戦っているのに……自分は安全な場所で待っていることしかできない。

 今までできていたことができない。少なくとも、一級術師として戦えたなら、死地に向かう彼女の隣に立ち、力を貸せただろう。だからこそ やるせなかった。

 そんなことを考えていると、不意に星良の身体がビクッと跳ねた。

「星良さん……⁉︎」

 コーヒー缶を取り落としたことにも気づかず、七海は星良に駆け寄る。すると、ビクビクッと身体が痙攣し、彼女は血を吐き出した。

 彼女は何と言っていた?
 万一、ヒトガタが殺されるようなことがあれば……。


 ――「死の衝撃が本体に跳ね返って……最悪 死ぬこともあります」


「星良……!」

 取り繕うことも忘れ、七海は星良を……婚約者の名を呼んだ。
/ 548ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp