第24章 グラーヴェに堕ちゆく【浴】
――「死にに行くつもりですか?」
そう、七海は星良に尋ねた。
妹同然の津美紀を助けるために、万に会いに行く必要がある。けれど、万は受肉した過去の術師。一人で行くのは無謀だ。
特に、星良の術式は戦闘に特化したものではない。術式相性によっては苦戦を強いられるだろう。
けれど、星良は引かなかった。
――「この戦いがどういう結果になるかは分かりませんけど……それでも、ただ死にに行くつもりはありません。それに、星也を助けるためにも、津美紀に生きていてもらわないと……」
詞織と恵のためにも……。
受肉した人間は元には戻せない。それでも、津美紀を助ける手段があるのだろう。それに関して、七海は星良に何も聞かなかった。
星良との会話を思い出しながら、七海は自分の左腕を見る。動かそうとすれば軋むような感覚と同時に鈍い痛みが走った。
身体さえ動けば……私が一緒に行けるのに……。
内心で舌打ちし、七海はベッドで横たわる“星良”を見る。
津美紀――万がいるのは仙台。星良は自分の魂の一部を分けたヒトガタを向かわせ、本体を眠らせた。
自分は凡庸だと、星良は事あるごとに言っている。歴戦の術師である万には勝てないと決めつけているような気すらした。
そんな星良が、最悪の事態の保険として講じた策だ。