第24章 グラーヴェに堕ちゆく【浴】
『仮にそうだとして、どこへ戻るつもりだ? 姉を手にかけ、妹を殺しかけておいて……誰がオマエを受け入れる?』
ビクッと反射的に肩が跳ね、詩音は宿儺を見上げた。
『もはや、オマエに戻れる場所など存在しない』
――「一番 愛してるのは、詩音だよ。今も昔もこれからも、それだけは“絶対”に変わらない」
そうよ。
詞織は あたしを愛してくれてるわ。
たとえ――……。
瞬間、詞織を刺した感触が蘇る。
驚愕に見開かれた夜色の瞳――その光景が脳裏を過ぎり、詩音は握りしめた手を震わせる。
本当に……?
ビルから墜落していく詞織を、伏黒は躊躇いなく追いかけた。
あたし以外にも、詞織を守るために命を懸けられる人間がいる。
あたしの居場所なんて、最初から……。
砂利を踏み締める音に詩音は顔を上げた。目の前には、いつの間にか宿儺が立っている。彼のその紅い視線から逃れるように、詩音は俯いた。
もう、何も考えたくない……。
無意識に地面に爪を立てる。引っ掻かれて抉れた地面の跡を、詩音は茫然と見つめた。
* * *