第24章 グラーヴェに堕ちゆく【浴】
なんなのよ、あなたたち……あたしに構わないでよ……。
あたしには詞織が……。
色を失くした星良の頬に触れる。
すると、ポゥ…と星良の身体がぼんやりと光り、輪郭が解けた。やがて、星良が倒れていた場所に、人の形をかたどった紙きれが落ちる。
『これ……ヒトガタ……⁉︎』
思わず声を上げた。驚きに目を丸くしていると、背後で宿儺が『クックッ』と喉を鳴らして笑う。
『この俺に悟らせないほど精密なヒトガタ。その上、一時的とはいえ、【浴】で沈めた神ノ原 星也を起こすとは……少々 侮っていたようだな、神ノ原 星良』
だが、と宿儺は続けた。
『他者の生得領域に干渉する一門の秘術は、互いの魂を触れ合わせる必要がある』
グッと詩音は奥歯を噛み締める。
使ったことはないが、他者の生得領域に干渉する秘術の理屈は詩音も知っている。
術師本人が来ていないのならば当然、星良はヒトガタに自分の魂を分け与えていたはず。
『ならば今頃、本体に衝撃が跳ね返って本人は死んでいるだろう。そして、お前の死で神ノ原 星也は完全に沈んだ。礼を言った方がいいか』
星良の使ったヒトガタを手にし、詩音はグシャッと握り潰した。
『伏黒 津美紀、神ノ原 星良が死んで、俺の中の神ノ原 星也の魂は完全に折れた。目的は達成だ』
背を向けた宿儺へ、詩音は『だったら……』と言葉を投げかける。
『だったら……あたしは もう必要ないでしょ……』
そう小さく呟くと、宿儺が足を止めて振り返る。