第24章 グラーヴェに堕ちゆく【浴】
『星良……星良……!』
光を失った夜色の瞳に、詩音は必死で呼びかけた。
『“姉さん”……! ウソでしょ……起きてよ! ねぇっ‼︎』
けれど、姉は答えることなく、ただとめどなく血を流す。
『……こんな……こんなことって……』
身体の震えが止まらない。
これって……あたしが……あたしが姉さんを……。
自分の手を見つめる。宿儺に術式で無理やり刀に変えられ、姉を斬った。その感触が生々しく残っている。
『随分と取り乱すんだな。妹以外はどうでもいいのではなかったか?』
ニヤニヤと宿儺が こちらを見て嗤った。兄と同じ顔なのに、その仕草も表情もまるで別人。
詩音は唇を噛み締める。
『……そうよ……大嫌いだわ。皆……皆……』
十二年前、【神ノ原の惨劇】で、詩音は一族の者たちを ことごとく殺した。
もちろん、星也と星良のことも殺そうとした。詞織が止めたから殺さなかっただけのこと。
あたしには詞織だけ。詞織さえいれば、他に何もいらない。
そのはず、なのに――……。
ツゥ…と涙が頬を伝う。