第24章 グラーヴェに堕ちゆく【浴】
――あたしは宿儺に勝てない。
そんなもの、1+1が2なのと同じくらい、簡単な道理。
目の前に立てば、その圧倒的な存在感に嫌でも理解させられる。
それでも……これは あたしがやらなきゃいけないことだから……。
――【書字具現術『接続』】
刀に胸を貫かれながらも、星良は宿儺の顔に呪力を含んだ己の血で文字を書き綴った。
神ノ原一門の秘術――相手の生得領域に干渉する術式。
瞼を閉じ、星也の存在を強く意識する。
トプンッと意識が沈み、星良は目を開けた。
前後の感覚も曖昧な暗闇――けれど、その暗闇の中でも星也の姿は はっきりと見えた。
「星也‼︎」
弟に駆け寄り、星良は呼びかける。
「……星良、ちゃん……」
普段は「姉さん」と呼ぶ星也が、頼りなく瞳を揺らして見上げてきた。
「星也、帰ろ? 詞織も恵も心配してるわ。他の皆も……」
「……できない……」
星良の言葉を遮り、星也が力なく首を振る。
「僕は津美紀を殺した……そんな僕が、どんな顔して詞織や恵に会えるっていうんだ。皆のことも攻撃して……殺そうとした……詩音だって、僕のせいで……!」
「星也! そうじゃないでしょ!」
星也の肩を掴んで揺さぶった星良は、顔に触れて無理やり視線を合わせた。