第24章 グラーヴェに堕ちゆく【浴】
『星良!』
ドサッと地面に叩きつけられた姉へ詩音が呼びかけたが、返事ができる状態ではないようだ。
妙だな、と宿儺は痛みに身体を震わせる星良を見る。
『オマエ、呪字を身体に刻んでいるはずだろう? どうした?』
「……今日は……刻んでないわ。“縛り”だって言ったら……分かる?」
万との戦いに備えたものか。
その甲斐なく、こうして殺されるわけだが。
フラリと立ち上がった星良が、ゲホッと血を吐き出す。
「あなたにとっては羽虫程度の あたしを捨て置かないってことは……あたしは、殺すだけの価値があるってことかしら……?」
『頭はよく回るようだな』
ククッと嗤うと、星良はおもむろに筆や呪符を捨てた。
「殺すなら一思いに やってちょうだい」
『なんだ、もう諦めるのか? つまらんな』
ため息と共にそう言うと、彼女は小さく笑う。
「星也も勝てない相手に、あたしが勝てるなんて思ってないもの。でも、あたしは凡庸だけど、神ノ原一門の術師としての誇りはある。無様な死に方をするつもりはないわ」
妹の前だしね、と少し茶化すように詩音へ軽く視線を向けた。