第24章 グラーヴェに堕ちゆく【浴】
『……伏黒、津美紀……』
呆然と呟く詩音を一度 見やり、宿儺は砂利を踏みしめながら倒れた万の前に立った。
『紹介がまだだったな』
宿儺が手のひらを翳すと、そこに眩い光が集まる。
『十二天将の最高位――【貴人】。コイツは解析した事象に適応する能力を持つ』
星也や神ノ原一門の先祖である安倍 晴明は、【貴人】の能力を使わないという“縛り”のもと、他の十二天将の能力を底上げしていた。
現に、渋谷で【魔虚羅】と対峙した際も、星也は十二天将の出力低化を厭い、【貴人】の能力を使わなかった。
【魔虚羅】と同じ能力を持つ【貴人】を使っていれば、あれほど一方的な戦いにはならなかっただろう。
『オマエのような呪力効率が悪い術式は、運用手段が画一的になりがちだ。何を構築しようと、構成する物質は使い慣れた液体金属か、虫の鎧を流用する。だが それは――』
――すでに適応済みだ。
「何よ……アタシのこと、そんなに知ってたの? 嬉しい」
死の淵にありながら、万が目尻を下げて口角を上げる。殺されるというのに笑みを溢すとは。
すると、万が震えながら手を持ち上げた。
「これ……アナタに……アタシだと思って、後生大事に使ってね……」
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――前後の感覚も不確かな暗闇……意識の奥深くに沈められた星也はビクッと身体を震わせた。
「……津美紀……」
涙が頬を伝う。
身体を丸くして蹲り、星也は現実から逃れるように、固く目を閉ざした。
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