第24章 グラーヴェに堕ちゆく【浴】
「これでもまだ【御厨子】を出さないの⁉︎」
万の蹴りが決まり、宿儺の身体が後方へ吹き飛ばされた。それに合わせ、宿儺を取り巻く輝きが明滅する。
グラウンドの壁を突き破り、建物内へと二人が移動し、詩音も遠目で戦いの行く末を見つめた。
「斬ってよ! 斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬り刻んで‼︎ 肉に埋もれたアタシの愛を! その瞳で感じなさいよ‼︎」
後方へ移動しながら万の攻撃を躱していた宿儺へ、液体金属による斬撃が襲う。
ザクザクッと斬り刻む音に詩音は耳を覆いたくなった。けれど、液体金属の隙間から宿儺の紅い瞳が覗き、詩音の背筋がゾクッと震える。
『【六合】』
パシャッと音を立てて液体金属が弾けた。宿儺の背後には、彼よりも一回り大きな牡鹿が顕現している。
――十二天将【六合】。和平や調和を司る、呪力操作に長けた式神。おそらく、液体金属に流れていた万の呪力を中和し、霧散させた。
『【薬師ノ一 ――急々如律令】』
薬師如来の真言による【反転術式】の治癒。宿儺自身、【反転術式】を使えるはず。それを使わないということは……徹底的に星也の術式で戦うつもりらしい。