第24章 グラーヴェに堕ちゆく【浴】
『慣らし運転にはちょうどいい』
そう呟いて、宿儺が十二天将――その一つを呼んだ。
『【謹請現示――貴人】』
パキパキッと光が現れ、宿儺を取り巻きながら輝く様に、詩音は息を呑む。
十二天将――貴人。
その名前を、詩音は文献でしか知らない。
十二天将 最高位の神でありながら、攻撃の手段も防御の手段も持たない。それなのに、単体で戦況を覆せる能力を持つ。
祖である安倍 晴明や、同じく十二天将を操る星也は、この式神を使わないことで、他の十二天将の能力を底上げしていた。
【貴人】を身に宿した宿儺が、昆虫の鎧を纏う万の拳を躱す。だが、躱しきれず、その拳が宿儺の頬を打った。
万の攻撃の威力もスピードも、先ほどとまるで違う。
床に強かに背中を打ちつけて転がる宿儺の上空を通り過ぎ、万は再び折り返してきた。そこへすかさず、宿儺が【白虎】を呼び出し、万と同じく上空を駆けるが、十二天将 最速の【白虎】でも、万の攻撃を捌ききれない。