第24章 グラーヴェに堕ちゆく【浴】
『ところで、俺もオマエに聞きたい』
観客席から万を見下ろし、宿儺は口元に歪んだ笑みを浮かべる。
『後々、と言っていたが……この後があると思っているのか?』
初手、先に万が動いた。黒い液体金属を構築し、それをうねらせながら宿儺へ伸ばす。攻撃を躱せば、今度はそれを足場に使い、こちらへ蹴りを放ってきた。
連続して繰り出される蹴りを素手で捌き、宿儺も攻撃の隙をついて万の腹へ蹴りを放つ。だが、万の術式により生み出された厚い板が、宿儺の蹴りを防いだ。
「“天使”がいたでしょう? アイツ、アナタに気づいてなかったんじゃない?」
互いに距離をとったところで、万が腹の板を投げ捨て、口を開く。
「でも、アタシは気づいたわ。なぜだと思う?」
『いちいち反応を求めるな』
煩わしくて顔を顰めると、万は頬を染めて続けた。
「愛よ、愛。戒律とそれからくる憎悪では、愛を超えることはできない」
――ねぇ、宿儺。
うっとりと名前を呼ばれ、宿儺は冷めた視線を万へ返す。
「アナタを殺すのはアタシでありたい。アタシを殺すのはアナタであってほしい。それでも、アタシが勝った後 生きていたら、アナタはアタシに何をくれる?」
『――全て』
短く答えてやると、万は目を見開いた。