第24章 グラーヴェに堕ちゆく【浴】
「あら? その子にしたのね」
宿儺が詩音と仙台のサッカースタジアムを訪れると、グラウンドの真ん中で万が出迎えてきた。
『色々あってな。面(ツラ)も良いし、それなりに満足している』
「顔なんて好きに戻せばいいじゃない。それだけ受肉体へのアドバンテージは あなたにあるはずよ」
『それは万、オマエも同じだろう』
万の顔も宿儺と同じように、受肉体である伏黒 津美紀のままだ。
「ふふっ。考えることは一緒ね。この方が後々 都合がいいもの。それより……」
言葉を区切り、万の視線が詩音へ向けられる。
「その女、誰よ。当たり前みたいに宿儺の隣に立つなんて」
万の殺気に怯んだ詩音が宿儺の衣を小さく掴み、背中へと半身を隠した。
『勝手に俺の玩具で遊ぶな。オマエには関係ない』
「はぁ⁉︎」
逆上する万を平然と無視し、宿儺は『詩音』と名前を呼んだ。
『万程度に怯むな。底が知れるぞ』
『う……うるさいわね』
無造作に詩音の手を解き、万へ向き直る。
「何よ。アタシを差し置いてイチャついてくれちゃって」
『どこをどう見たら そう見えるんだ?』
『勝手な妄想しないでくれる? 気色悪い』
ガタッと観客席に腰を下ろし、詩音は顔を顰めた。