第23章 最悪のブレイク【浴/自浄自縛】
「【聴かせて……あなたの歌を……夜空へ響かせて……あなたの――……】」
そこで、詞織の歌が途切れる。俯いた彼女の肩は小刻みに震えていた。
それを階段上で見ていた伏黒は、一段ずつ降りながら「詞織」と呼びかける。
「メグ……」
「オマエ、もう前線に出るな」
その言葉にビクッと詞織の肩が跳ねた。
「分かってんだろ。今のオマエは術式が使えない。行っても足手纏いになるだけだ」
「でも……! でも……」
夜色の瞳が潤み、目尻に涙が溜まる。しかし、その涙が溢れることはなかった。
「詞織、言うこと聞いてくれ。オマエに死なれると困るんだよ」
俯いた詞織の頬に触れ、顔にかかる髪を払う。目元は赤く腫れ、顔も熱を持っていた。詞織がずっと泣き続けているのは伏黒も知っている。
詩音は必ず助ける。
そう言ってやれればいいのに……。
「……わたしが、弱いせいで……詩音はいつも、わたしを助けてくれたのに……わたしは……何もできなかった……」
ギュッと伏黒の制服の裾が握られる。弱々しく震える手に触れ、伏黒は詞織を抱きしめた。
「オマエのせいじゃない。俺が弱かったからだ。詩音のことも……星也さんのことも……」
――津美紀のことも……。
グッと奥歯を噛み締めると、詞織を抱きしめる腕にも無意識に力が入る。
「星也さんを取り戻そう。そしたら、詩音だって戻ってくるはずだ」
伏黒の言葉に、ようやく詞織の瞳が自分を捉えた気がした。
「うん……うん……!」
――「俺たちはそんなに頼りないのかよ」
伏黒を庇って奪われた星也を思い出す。
―― “絶対” 取り戻す。
初めて出会ってから今日まで、何度も何度も助けてもらった。
だから、今度は俺が…… “俺たち”が……。
* * *