第23章 最悪のブレイク【浴/自浄自縛】
《夏油 傑》
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滞留結界:――
鍾乳洞のような薄暗い空間で、羂索はコガネを呼び出した。
「コガネ、総則追加。【死滅回游】の新規泳者の参加を打ち切ってくれ」
『却下されました。総則7に抵触します』
「そうはいかないよ」と言葉を重ねるも、コガネは『却下されました』と繰り返す。
日本には、天元が呪霊の発生抑制と補助監督役の結界術の精度を底上げするため、数多の浄界(※より優れた結界)がある。
その中で要となる四つの浄界――皇居を中心とした浄界、東京遷都候補地だった高専地下【薨星宮】の浄界、京都 山国御陵(やまくにのみさき)浄界……。
「そして ここ……日本を東西に分断する巨大浄界――飛騨霊山浄界」
【死滅回游】はこの天元が作った浄界をベースに作られた梵界(※浄界より優れた結界)だ。
『へぇ〜』と身体をくねらせながらコガネが相槌を打つ。
「【死滅回游】のゲームマスターは誰でもない。だが、強いて言えば私でもコガネでもなく、天元だったんだよ。もちろん、羂索が勝手に仕立てたのだけどね」
渋谷事変の後、天元がこれらの浄界を解き放てば【死滅回游】は終わり。羂索の思惑は全て水泡に帰した。だが、これらの浄界がなければ、脈々と続いた呪霊との戦いや結界術のノウハウを千年前からやり直すことになる。
「多くの人間が死ぬだろう。天元は賭けたんだ。私ではなく、彼らが勝つことに」
――さて。その天元は今、私の手中にある。
羂索は【呪霊操術】で天元を呼び出した。ズズ…と隣に天元が腕を組んで現れる。
「この浄界を張った張本人だ。破壊することは容易い」
そこで言葉を区切り、コガネに向き直った。
「コガネ、総則追加。【死滅回游】の新規泳者の参加を打ち切ってくれ。さもなければ、浄界を破壊し、【死滅回游】を強制終了させる」
『総則……なっなっなっ……7に……』
コガネがダラダラと冷や汗を流す。困惑に目尻が下がり、身体はガクガクと震えていた。