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意志あるところに道は開ける

第14章 14.


病室の花を変えていたお母さんに、お姉さんが、ゆうちゃんの彼女やって、と声をかけた。

「篠塚 ゆりと、申します」
「侑士の母です」

何か言いかけて、言葉が出ないお母さんから彼に目を移す。

「ゆうちゃん、彼女はん、ゆりはんよ」

心臓が動いていることがわかる機械の音だけが鳴る。

お姉さんに勧められてベッドの傍らに立つと、久しぶりに見る顔を覗き込む。

「侑士くん...?」

何か反応があるかな、と名前を呼ぶ。
少し悩んで、いつもみたいに呼んでみた。


「ゆっくん、ゆりだよ」

お母さんが握る手にも何の反応もなく、心音が穏やかに維持されていることしか分からない。

「わかる?」

ツン、とした鼻をすする。

「ゆっくん、聞こえる?」
「ゆうちゃん...」

僅かな気配に、酸素マスクの中の彼の口元に目を凝らす。

「っ、ゆっくん!?」

僅かに上下した喉仏。

「あのっ」

今、と見たお母さんとお姉さんは、静かに彼を見るだけだった。

「たまにそんな感じの動きはあるんよ。
 痙攣みたいに、手とか足が動いたり、さっきは、確かに何か言ったように、唇が動いてた。
 目は開かへんけど、眼球を動かしとるな、って時もあんねん。
 こっちの言葉に反応しとるんかなって時もあれば、関係無く、寝言とか寝相みたいに動く時もある。
 ほんまに、深く寝付いとるみたいな...夢の中で生きとるっちゃうんかな...」
「夢の中で、生きてる...」
「心だけが、どっかに行ってもうたんかなぁ」

お姉さんの言葉に、もう一度、侑士を見る。

(ゆっくんみたいに、医学がわかれば...)

何か助けられたんだろうか、とバッグのハンドルを強く握る。

また、わずかに震えた唇。

「あ、」

つ、と彼のこめかみへと流れた涙。
それを、お母さんがティッシュで拭った。

「痛そうに顔を歪めたりもするんよ。
 今もう治ってんけど、見つかった時は、えらい傷ついとって、体中痣だらけやってん。
 警察は、転落とか、何かしらの原因で頭、傷ついて意識無くしたんかもしれんって。物取られたりはしてへんし、トラブルとかに巻き込まれるタイプでも無いから、事件性はないやろうって」

なんがあってんやろ、とお姉さんが見た彼の手を、お母さんがさすったり握ったりしていた。

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