第14章 14.
また何かあれば、と病室を出てきた医師。
廊下で待っていた私に気付いた彼女が、あ、と近寄ってきた。
「さっきは、ごめんなさい」
標準語の彼女に、いえ、と首を横に振る。
「ゆうちゃんの友達、なんかな?」
「あ...その、お付き合いをさせていただいていま、す。
篠塚 ゆりと、言います...」
「ゆうちゃん、彼女おったんや。
私、姉の恵里奈」
弱々しく笑った彼女に、彼から聞いています、と頭を下げる。
「まともな、挨拶もせず...」
「え?長いん?」
「えっと、先々月から...」
「まだまだやん」
挨拶やなんて、と笑うお姉さん。
「あの、がくと君...向日 岳人君から、侑士、くんのこと聞いて...」
「ああ、ガクト君な。
よう、うちに来とった子やなぁ」
おかっぱの子やろ?言われ、そうです。と頷く。
「侑士君に、なにが、あったんですか?」
なにが、としばらく黙り込むと、苦しそうに顔を歪め、目を閉じた。
「わからへんのよ」
「わからない...?」
うん、と片腕を掴む。
「なんもない日やってん。
バイトも無かったんに、帰ってこんくて...中学ん頃から仲良え子が、メッセージが既読にならへんって家まで来て、なんやおかしいってうちからも電話したりしたけど繋がらんくて
そんで、日付変わっても何も連絡なくて、おかしすぎるってパパとママが警察に届けて、ゆうちゃんの友達がツテで携帯の電波探ってくれて、半月前に東京駅におったのがわかって、そっからまた調べて、見つかったんがなしてか軽井沢の売却中の別荘。
そこに携帯はあるって出とって、管理人はん呼んで警察と入ったら、建てもん中で倒れとる、ちゅうか...寝とって」
「ね、てた?」
今もやけどね、と、病室を見る。
「何しても起きへんの。
検査もいろいろしとるけど、なんも異常なくて、ふかーく寝とるだけなんやて。
けど、さっき...泣いてん」
「泣いた?」
「涙がね、つーって」
どうして...?と、聞くと、わからへん、と首を横に振る。
「原因は...?」
「わからへんの。
ただ、ずぅっと、ずぅっと寝とるんよ」
怪我はもう治ってるんやけどね、とお姉さんは、深く、深くため息をついた。
「ゆうちゃんに会うやろ?」
お姉さんは、赤くなった目で、ママにも紹介せんと、と言った。
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