第13章 13.
「ひのはの父ちゃんはさ、紫陽先生のことを目の敵にしてんだ」
カレンを紫陽の所へ連れて行った侑士から事の流れを聞いた紫陽は、2人で話をさせて、と侑士だけを診察室から出るように言った。
カレン、と不安を残しながらも部屋を出ると、侑士に手を引かれながら俯いて帰ってきたカレンを心配したレイが待っていた。
「紫陽先生が、敵...?」
なして?とロビー脇の談話室でレイに聞く。
「ひのはの父ちゃんは、働く人をどんどん増やしていろんなものを作って売って、たくさんお金が回るべきだって考えてんだ。子どもでも、ある程度の計算や読み書きができれば、働くべき、『生産性』ってやつを持つべきだって。
けど、紫陽先生は違う。
紫陽先生と、この診療所を作った紫陽先生の父ちゃんは、子どもは自由に遊び、学び、のびのびと暮らすべきって考え。
子どもに対する考えが両極端だから、相容れないってやつなんだよ」
「けど、ここにおる子たちも、働いとる子もおるやんか」
うーん、とレイは唸った。
「違うんだ、侑士。
俺たちの『おしごと』はさ、言わば、練習さ。
親がいる家庭の子で言えば『お小遣い』なんだよ。
これから本当に大人になって、『世の中』ってやつに出て、『責任』ってやつを負うようになって、仕事の『対価』としてそれに見合った『賃金』を得ることで生活を立てていく。それが大人さ。
ここで俺たちがやってるのは、その『練習』。
本当なら、そのお金だけで、服や遊びだけじゃなくて、食べ物や住む場所を確保しなくちゃならないんだ。場合によっては、家族の分も必要になる。それだけの金を稼げるのが『大人』だよ」
うん、と頷いてみたが、侑士はレイの言葉の半分ほどしか理解できていなかった。
「ここで、畑仕事や裁縫や工具を使う作業の経験をして、これなら稼ぎになるっていう、自分にあった物を見つけて、それで食っていかなきゃならない、稼がなきゃならない。
いつまでも、ここで飯作ってもらって、洗濯してもらって『おしごと』をして『おこづかい』をもらってちゃダメなんだ」
「それって、ずっとここには、おられへん、てこと...?」
「当たり前だろ」
レイの言葉に、侑士は、そんな...と俯いた。
「いつかは『おとな』になって、出ていかなきゃ」
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