第13章 13.
「スウィーティー♪」
畑に撒く水を汲み上げていた侑士は、その声にビクッ!として振り返った。
固まった侑士は、こ、こんにちは、と少し先で微笑み立つひのはに挨拶をした。
「ごきげんよう。
水撒きをされますの?」
これは?と手押しポンプを珍しそうに眺めるひのはに、戸惑いながらも、う、うん、と頷く。
「これ、ガコガコさしたら水が出るんやで」
見とってや、とポンプで水を汲み上げる。
「水音がしますわ」
ここから?と取水口をのぞき込もうとしたひのは。
「そこおったら、」
「あっ...きゃぁああっ」
ザブ、と溢れ出した水の勢いに尻もちをついたひのはは、頭からずぶ濡れになった。
「水出る、言うたやん...」
目を丸くして固まっているひのはに、首に巻いていたタオルを差し出した。
「堪忍な、服、びしょびしょやな...」
どないしょう、と眉尻を下げる侑士に、平気ですわっ!と立ち上がる。
「ちょうど、ここまで駆けてきて、暑かったところですので!
いい熱冷ましになりましたわっ」
濡れた金髪を絞ると、えいっ、と真っ白なヒールを脱ぎ捨てた。
「侑士っ」
館の方から駆けてきたのはカレンだった。
「っあなた、」
「カレン、知っとるん?」
ひのはに気付いた彼女に、お互い年の近い者同士、知り合いなのかと見たカレンは、鋭い目突きでひのはを見る。
「侑士、何もされてない?」
「え?」
なにかって?と問いかけた侑士の手を取ると、何の用?と2人の間に割り行った。
「わたくしは、ただ、スウィーティーに会いに...」
「何が目的?
侑士をどうしようというの?」
「そんなつもりは...」
「私たちに関わらないでっ
侑士は私たちの家族よっ」
「カレン...?」
「侑士に何かしたら、容赦しないわよっ!」
そう言ってひのはに一歩詰め寄ったカレンの手に、草木の剪定に使うハサミが握られており、侑士は、カレンっ、と驚いた。
「そんなもん、向けたらアカンっ」
「あなたは何も知らないんだから下がってて!」
「せやけど、誰かケガしたりしたら、紫陽せんせーが大変なるやんか」
やめぇや、と掴んだカレンの両手の震えに気づいた侑士。
「堪忍ね、」
行こ、とカレンの手を引いて、館へと駆け戻る侑士は、スウィーティー、と伸ばされたひのはの手に気づいていなかった。
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