第13章 13.
侑士は、見知らぬ人への警戒心が強く、突然現れたひのはのことを何も知らずに怯えてしまった事をこと丁寧に伝えた紫陽。
「名も顔も知らないあなたから急に『好きだ』と伝えられて、驚いてるのよ」
「わたくしを、知らない...?」
ひのはの父は、現在、この町の長。
その祖先は、遠く昔、この地にこの町を築いた先住民族とされており、いわば『由緒正しき家柄』であった。
「記憶を無くして、何も分からぬままここに来たの。
あの年だけど、世のことも知らなければ読み書きだって最近までできない子だった。ひどく大人にいじめられて、傷ついて、最近ようやく、少しずつ人らしく生きられるようになったの」
「スウィーティーがっ
そんなっ!ああ」
侑士の経緯を知ったひのはは、どこにいますのっ?と立ち上がった。
「その嘆かわしい愚民、わたくしが成敗してやりますわっ」
勇ましく立ち上がると、侑士がいた『派遣所』はどこっ?と目をギラつかせるひのは。
「それって侑士のためになるかしら?」
どう思う?と紫陽に問われたひのはは、スウィーティーのため...と考え込んだ。
助言せず、ただ待つ紫陽。
手に顔を埋めてキッチンの腰掛けに座り込んだひのは。
「なんて世の中なの...」
「あなたは聡明だわ」
落ち込まないで、と彼女の隣でその肩を抱く。
「Dr.紫陽。
あなたがスウィーティーを救助したことに感謝するわ」
「きっと、彼が心の奥底では諦めてなかったからよ」
「それを見抜いたあなたはさすがだわ」
紫陽を賞賛したひのはに、流しに腰を預けて話を聞いていた空木は、やかんに水を注いで火にかけた。
「そんな事も知らないで、私は...
スウィーティーが怯えるのも当然だわ...」
けどっ!と立ち上がったひのはに、空木はビクッ!とした。
「私のスウィーティーへの気持ちは変わらないわっ
決めましたわっ私、スウィーティーの『治療薬』になってみせますわっ!」
「おおぅ、エグいくらいのポジティブシンキング...」
諦めねぇのな、と驚く空木に、当然ですわっ!と胸を張る。
「スウィーティーの魅力になんの影響もなし!
その経験があったからこそのスウィーティー!
まずはそれを自覚していただかなきゃっ!」
あいつ大丈夫かな、と空木が呟いた。
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