第13章 13.
きゃあきゃあと声を上げながら、菜園の脇で近くの泉から汲み上げる水で遊ぶ子どもたち。
レイとともに、遊木の手伝いで野菜の収穫をしていた侑士は、真っ赤に実ったトマトのヘタ先をパチンとはさみで切った。
「よっしゃ!そろそろ休憩にするかっ」
んんー!と腰を伸ばした遊木に、トマトが詰まった籠を手に畝の間を歩きながら、取りこぼしや残る枯れ葉がないか見る。
「遊木はん、これ、取るん早かったやろか」
見してみ、と差し出された手に、悩んだトマトをのせる。
「ケツに錆が入ってるから、取って正解だ。
ここは固くなっちまってるから、スープかソース行きだな」
取り頃だよ、と籠に乗せられたトマトに、よかった、と笑う侑士。
「野菜を調理場に運んでくれるか?
空木さんに、今日のおやつは畑で食べれるものか聞いてきてくれ」
「わこぅた」
籠いっぱいの野菜たちを抱え、キッチンに直結する勝手口に向かう。
「誰やろ?」
開かれた勝手口を通せんぼするように立つ空木の前には、ドレスの後ろ姿。
時々、仕入れものを届けてくれる店の子どもたちが来るので、その子だろうか?と、気にしながら近づく。
「知らねぇって言ってんだろ」
「そんなはずありませんわっ!
今朝だって、庭園の水やりをしてらしたわっ」
「うちの庭師だろ」
「ここの庭師はあんなに若くないでしょう!」
「妙に詳しいじゃねぇか」
「当然よっ!私を誰だとお思い?
ねえ、少しご挨拶させていただきたいだけですのっ
せめてお名前だけもっ!」
「いねぇよ、そんなやつ」
人探しやろか、と籠の野菜を見下ろし、どないしょうかな、と大きなリボンが目立つ後ろ姿の後ろまで行くと、空木に気づかれた。
あ、という顔をした空木が、あっちに行け、と玄関の方を指す。
「あ、でも、野菜...」
そう声を掛けた。
豊かなカールヘアをふわりと翻させて振り向いたのは、自分と変わらないくらいの女の子。
「畑ん野菜、持ってきたで。
今日のおやつ、畑で食べてもええか?って遊木はんが...」
聞いてこいって、と言いかけた言葉。
「ああっ!彼よっ!
会いたかったわっ、マイスウィーティー!」
キーン、と頭に響きそうな甘い声。
「マイラーブ!」
バッ、と伸ばされた両腕と子どもたちとはまた違う甲高い声に、空木が立つ勝手口の隙間から家の中に逃げ込んだ。
