第12章 12.
「私もっ!」
パッ!と顔を明るくしたカレン。
「ここに来るまでは『おい』とか『それ』としか呼ばれてなくて、名前って無かったのっ
ここに来て、紫陽さんが『名前はあなたを証明する大事なツールだから』って『カレン』ってつけてくれたのよ。『純粋』って意味なんですって」
少女らしく笑うカレン。
「ぴったりやんか」
「呼んでもらえる名前があるって、こんなに素敵なことなんだっ!って知った。
確かに、レイに呼ばれるとカチンとするけど、でも私はこの名前が大好きっ」
「なぁ、それ『カチン』ときとるんやのぉて『ドキッ』としとるんちゃうん?」
「え?」
固まったカレンに、あ、刺繍屋、と露店を見た侑士は、ここおってや、と店先に立ち止まらせ、彼に駆け寄った。
「レイっ待って!カレンがいてへん」
「はぁ!?さっきまで話してたじゃねぇかっ」
「果物蜜の入れもん捨ててくるて、はぐれてもうた」
「なにしてんだよっカレンは女の子なんだぞっ!」
もうっ!と歩き出すレイ。
「侑士、小さい奴ら見てろっ
俺がカレンを探すっ」
「果物蜜買うたところかもしれん」
「わかってる!何年一緒だと思ってんだ!
お前の何倍も見てきたんだぞっ俺はっ」
どうしようと、戻ってくるレイから隠れるように刺繍屋の前にしゃがみ込む。
「果物蜜の店かな...?
誰かに捕まったりしてないよな
あっ、さっきカレンが好きそうな刺繍屋があった...そこで立ち止まっちゃったかな...
『見よう』って言ってやればよかったかなぁ...」
バツが悪そうにしながらこちらに来るレイ。
(刺繍屋さんのこと気づいてた...)
スカートの裾に花柄を入れてもらっているお姐さんたちに、いいなぁ、と横目に見ながら通り過ぎたのだが、レイはそれに気づいていたらしい。
「カレン、白のハンカチ持ってた。刺繍屋だなっ」
女の子が多い店先で、懸命に背を伸ばすレイに、俯いて顔を手で覆った。
「あっカレン!」
見つかった!と熱い顔でより俯く。
また馬鹿にされる、と目を閉じると、カレン!と呼んだ声が優しくてえ?と顔を上げる。
「疲れたか?」
「え、と...」
「おぶってやろうか?」
ほら、と背中を向けるレイ。
「早く乗れよ。みんなと逸れる」
まったく疲れてはいなかったが、じゃあ、とおぶられたレイの背中が大きくて、驚いた。
