第12章 12.
それしか無いやろ、と独特の口調で言う侑士。
「カレンは、何も分からへん俺をいつも助けてくれる。
それって、尊敬しとる紫陽はんがそう言うたからやろ」
「...それだけじゃないわ。
私は、あなたを『家族』だと思ってる...」
初めて告げた本心に、おおきに、と侑士は笑った。
「俺も、カレンのそういう優しいところ、めっちゃ好きやから、レイは、それが自分と同じ『好き』なんとちゃうかって、疑ぅてるんや」
「そうかしら?
侑士もレイも、同じ『好き』かもしれないわ」
「絶対ちゃうよ」
「どうして言い切れるの」
教えて、と見上げた侑士は果物蜜の入ったカップを揺らす。
「もしそうやったら、レイは俺の事傷つけとる」
「えっ」
俺やったらそうする、と侑士は飲み干したカップをぐしゃりと握った。
「簡単な話や。
ほんまに気に入らへんやつなら、そいつの好きなもん、壊してなくしてしまえばええ。それで狼狽える姿見て『ざまぁない』て嘲笑ったったらええんや。
例えば、カレンの好きな絵を破るとか、好きなもん全部食べてまうとか...カレンが好きな奴は殺してまうとか」
そんな事を言う侑士の瞳が仄暗く、少し、背筋がゾッとした。
「せやけど、レイって憎まれ口は叩いても絶対、カレンを傷つけるようなこと言わへん。
見た目のことはもちろんやし、カレンの、人権...考えや意見を否定するようなことも言わへん。ものも壊さへんし、なんやかんや言うてもカレンと一緒で優しい。
嫌われた無いんやと思うで、そういう事をカレンは嫌悪するてわこぅてるから」
遠くから、祭のメイン会場に向かって徐々に灯されていく灯籠を、キレーやなぁ、と見上げる侑士。
「ねえ侑士、あなた、どうしてここに来たの...?」
答えたくないならいいけど、と果物蜜を飲む。
「あー...俺、人攫い言うんにおうて、売り物にされてん。
それを紫陽はんが買うてくれてここに来た」
「つきとほしと同じなのね。
あの子たち、お祭りの屋台の見世物小屋にいたのを紫陽さんが引き取ってきたの」
「そうやったんや」
「ありがとう、話してくれて」
「ええよ。自分ことで覚えとるん、そんなんしかないねん。
『侑士』言う名前も、正直、そう呼ばれるから認識しとるだけで、自分の名前なんかイマイチ実感ないねん」