第11章 11.
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「こんにちはっゆーし先生っ」
診療所に響いた明るい声に、リナはん、とデスクで産婦人科学の本を読んでいた侑士が顔を上げた。
「それ、恥ずかしいからやめてくれへん?」
「なんでよー?
立派にお医者様じゃないっ」
ねー!と彼女は腕に抱いたものに微笑みかけた。
「あら、リナさん」
来てたのね、と診療所に来た紫陽が、声をかけた。
「一ヶ月検診に参りましたっ!」
「オーケイ。赤ちゃんは、今寝てる?」
「そうなのよー」
「じゃあ先にリナさんの体の具合から見ましょうか」
そうね、と紫陽は洗いたてのシーツを巻いて、簡易的なベビーベッドを作った。
「名前は?決まったの?」
紫陽が作ったベッドに赤ん坊を寝かせたリナは、ムフフ、と笑った。
「旦那がさぁ、これしかないって。
リツも絶対この名前がいい!これ以外はいやっ!ていうもんだから、即決よ」
「えー?すごく気になるじゃない」
赤ちゃんの方をお願いしていい?と紫陽から確認票を受け取った侑士も、なんやろ?とリナを見る。
「発表しまーす!この子の名前は『ユウ』ちゃんでーす」
「まあ」
ユウ、と書き込んだ侑士が、ユウ?と顔を上げた。
「『しょう』と悩んだんだけど、旦那が『しょうは男前すぎる』って」
「ちょっと!」
苦笑いする紫陽。
「『ゆうし』も女の子にはかっこよすぎるから、『ユウ』はどうかな?って言ったら、満場一致!」
明るいリナの声に、ええ?と侑士も苦笑いだった。
「多分さ、この子、選んできたんだよ。
侑士先生に取り上げてほしかったんじゃないかな。だから、早めに生まれちゃったんだと思う
もしかしたら、初恋かもねー?」
「お腹の子が初恋?」
まさか、と笑う紫陽に、いいでしょう!ロマンチックで!と言うリナ。
「というわけで、名付け親になってもらいました」
「先に確認とるものよね、それ」
「いいじゃないのぉ」
あっけらかんと笑うリナに、母体は健康そのものっと、カルテを手にする紫陽。
ちら、と見た赤ん坊が目を覚ました。
(目の黄疸無し、と)
皮膚の色も正常やな、と赤ん坊の手足の関節の動きを見る。
「これと言った所見は無さそうね」
ユウちゃん、と赤ん坊に笑いかけた紫陽の横顔に、誰かが重なった。
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