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意志あるところに道は開ける

第11章 11.



「産婆さんのところへ連れて行って。
 お風呂に入れて綺麗にしてくれるから。
 センリさんとリツくんに、女の子だと伝えてあげて」

タオルに包まれた血だらけの真っ赤な赤ん坊を恐る恐る抱え、部屋を出る。

「侑士、」

部屋の目の前にいたリツの声に、組んだ手を額に当てて椅子に座り込んでいたセンリが顔を上げた。

「女ん子やって。リツの妹やね」

タオルからかろうじて顔を見せている赤ん坊をリツに見せてやる。

「小せえ」
「こんなもんやと思うで。
 生まれたての赤ん坊なんて、せいぜい2〜3kgや」
「はやかったのねぇ」

さてさて、と歩み寄ってきた産婆に彼女を手渡す。

「まあまあ、べっぴんさんだこと。
 お母さんにそっくり。
 さぁ、あったかいお風呂できれいにしましょうねぇ」
「産湯はこちらに用意しております」

こちらへ、と産婆を案内する葵は、侑士と目が合うと、お疲れ様でした、と微笑んだ。


グラ、と揺れた視界に傾いた侑士の体。

何かにつかまらなければ、と伸ばした腕を力強く掴まれ、ふらふらと座り込む。

「大丈夫かっ!」
「っへーき、平気や。ちょっと立ちくらみしただけ」

腕を掴んでくれたセンリを見上げ、ヘラ、と笑う。

「リナさん、すごいなぁ...
 ずうっと腹ん中で守ってきた子ぉやのに、あんなに苦しめられとんのに、弱音吐かへんのやもん。
 リツでもあんなきつい思いしとるんに、またもう一回って、よう頑張れるなぁ」

母親ってすごいわ、と座り込んで壁にもたれかかる。

「お前も、そうやっておふくろさんから生まれてきたんだろ」

センリの言葉に、そうなんかなぁ、と膝を抱える。

「俺、記憶無くしとって、親もきょうだいもわからへんねん」
「..ふーん」
「俺が生まれた時も、センリはんやリツみたいに喜んでくれた人、おるんかなぁ」

どうなんやろ、と静かな廊下で溢した侑士の頭にセンリの手が乗る。

「少なくとも、今は、俺とリツは、お前が、侑士がいてくれたことに感謝してる」
「え、」

見上げたセンリが、向き直って深く、頭を下げた。

「紫陽ちゃんを探してきてくれたこと
 リナと赤ん坊を助けてくれたこと
 全部、侑士がいなきゃどうにもならなかった」

だから、と顔を上げたセンリ。

「ありがとなっ侑士先生っ」

ニッ、と笑うセンリの目には、涙が浮かんでいた。

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