第11章 11.
町へと繋がる最後の野山に入ると、シルキッサはより、速度を上げた。
安定の悪くなった乗り心地に、落されんようにせな、と紫陽にしがみつく。
「あなた、よく一人でシルキッサに乗れたわね」
「っ来るときはこないに荒なかったでっ」
舌を噛みそうになりながら、前へ後ろへ、右へ左へと振られる。
「なによ、シルキッサ。
侑士になら優しくするの?」
素知らぬ顔で駆けていくシルキッサに、いいわよ、と紫陽は少しむくれた。
「おいしい野菜をたくさんくれるから、かわいい弟とでも思ってるんでしょう」
「え?そうなん?」
「シルキッサは自尊心が強いの。
自分の上のものを認めないわ。対等か下に見るのよ。シルキッサはメスだから、自分より上と認めていないものには、基本的に優しいの。
自分よりあとに来て、お世話をしてくれる侑士のことを甘やかしてるのよ」
元はお姉さん気質な子だから、と生まれたときからの親友である彼女に、ねえ?と問う。
「私のことも、子どもの頃から知ってるからいまだに子ども扱いなの」
困ったものだわ、と笑う紫陽。
「シルキッサて、いくつなん?」
「少なくとも、私が生まれたときにはもう成馬だったわね」
(そう言えば、紫陽先生っていくつなんや...?)
少なくとも自分より年上だと思う。
空木や遊木と同じくらいに見えるので、20代から30代だと思うが、はっきりと年齢を聞いたことが無い。
(女ん人に年齢聞くんは失礼やろなぁ)
でも気になる、と真剣な眼差しでシルキッサに跨る紫陽を盗み見た。
来た道とは少し外れた先は、道と言えるものではなかった。
急ぎつつも、慣れない侑士を気遣いながら崖を降りていくシルキッサ。
「うっわ、怖っ」
前に倒れ込みそうになりながら、紫陽にしがみついていた侑士は、平坦になった道を見て、あっ!と声を上げた。
見覚えのある家や通りに、こんな近道あったんや、と驚く。
「あなた一人だと落ちてしまうかもしれないから、行きはこの道を選ばなかったのね」
いい判断よ。と褒められたシルキッサは、通りを疾走していく。
リツの家の屋根が見え、侑士、と紫陽は、手にしていた手綱を彼の手に握らせ、鐙に立った。
「え?せんせ?」
シルキッサに手をついた彼女の羽織がひらりと翻った。